知床工房酒辞典

「6月の初呑み切り」

銘酒の四方山話

「6月の初呑み切り」
寒い季節につくられる日本酒は、4月ごろ“火入れ”と言う低温殺菌をして貯蔵されます。
目的は、タンク別の調熱度合いや香味をチェックし、出荷順やブレンド方法等を決めるためであります。
この呑み切り、酒造家にとっては大切な行事で、この時、卸会社などを接待し、
盛大な宴を張るところも昔から数多くあります。
取引の大半をこの時期に決めてしまう習慣もあるぐらいです。
その後、月1回ずつの呑み切りを行い、秋風が吹くころ、もっとも呑みごろになるのを待ち、出荷されていくのです。
この時こそ、プロとしての蔵元や杜氏(酒造りの責任者)味覚が問われる瞬間であり、またほんのわずかな味の変化や違いに、
敏感に反応してゆく能力が必要となってきます。
我が子のように手塩にかけて育て上げたお酒であればなおさらのこと、飲み手の満足感を得るために、
ひたすらテイスティングし続けるのです。
この継続したたゆまない行為こそがモーメント・オブ・トゥルー(真実の瞬間)にほかありません。
搾った新酒は滓を沈殿させ、ろ過して1~2ヶ月後に「火入れ」と言う熱殺菌をして貯蔵いたします。
酒をだめにする火落菌や酵素類を殺して、酒の質を安定させる重要な工程なのです。
1568年の「多聞院日記」中には、「酒を煮て樽に入れる」とあります。
この時代は温度計がないから、酒に指を入れて「の」の字がやっと書けるくらいの熱さ(55℃)で滅菌していました。
お隣の中国では1100年代の記録がありますが、酒造りについての東洋人の知恵にはあらためて敬服いたします。

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